世界で求められるCUD

 90年代の後半 、パソコンの普及などにより印刷物・機器類・施設などのカラー化が進みました。背景の色と違う色をつけたり、2色以上を使って情報を整理することは、子どもや高齢者にも分かりやすいものです。「色」を分けることで区別し、アピールをし、状態を示したり行動を指示するといった表現ができるため、様々な物に使われるようになり、便利な情報伝達手段となっています。しかし、人の色覚は多様で「見分けられる色」「見分けにくい色」は誰もが同じではなく、「色の名前」は誰もが共有できるものではありません。

配色によって「文字が読みにくい」「区別ができない」「状態がわからない」困っている人がいます。

目立つように、見分けやすいように、整理しやすいようにとつけられた配色。しかし、この配色が不便さを作り、安全を守るものがその役割を担っていないことが様々な場面や場所で起きています。

 

誰もが「色の弱者(色弱者)」になる可能性はあります。

色覚は、大きく分けて5つのタイプに分けることができます。「見分けやすい色」「見分けにくい色」「似た色のグループ」はタイプによって異なります。色覚タイプは、生まれつき(遺伝性)ですので変わることはありません。
また、老化に伴う目の疾患(緑内障・白内障)により視力が低下すると色の感じ方は変わります。日本国内の白内障は総患者数94.7万人(実際には受診しない患者もおり相当な患者数。数字は「患者調査 厚労省 2017」による)といわれています。高齢化社会の進行にともない、ますます増える傾向にあります。
さらに、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症などの疾患で視力が低下する、いわゆるロービジョンと呼ばれる人も数十万人存在します。ロービジョンの人は視力の低下に加え、色の感じ方や明暗の差(コントラスト)をつけるなどの対応が必要になります。色覚の多様性に対応した社会づくりは、他人事ではないのです。

 

重要なのは、色の感じ方が違う人たちが「共存」できる社会づくりです。

C型色覚の人(一般色覚)とP型やD型色覚の人(色覚異常)の色の感じ方は全く異なります。
P型・D型色覚の人の割合は日本では男性の約20人に1人、女性の約500人に1人、日本全体では320万人以上いるとされています。欧米では男性の8~10%の割合になります。世界に2億人を超える人数と考えられており、その比率は血液型がAB型の男性の数に匹敵します。ヨーロッパでは、色覚の多様性に対応することは社会の当たり前の取り組みであり、対応していない色づかいは社会問題としてニュースに大きく取り上げられたこともあります。色の感じ方が違う人たちが共存できる社会づくりは日本においても重要なことといえます。
*「一般色覚者」「色覚異常者」という表現は医学用語です。呼称について詳しくは「色覚の呼称」をご覧ください。
「色覚の呼称」

 

「カラーユニバーサルデザイン」は、全ての人に価値のあるものです。

色覚は多様であることを前提とし、一人ひとりが色覚の多様性に対応することは、色覚タイプの違いや色の見え方の個人差を問わずに、スポーツや文化などの活動を楽しむことができ、安心・安全ですごしやすい社会の実現につながります。

カラーユニバーサルデザインは、色覚の多様性に対応した印刷物や製品、施設・建築物、環境、サービス、情報を提供する考え方です。一部の人たちのためにデザインするものではなく、より多くの人にとって「整理された見分けやすいデザイン」です。世界では、色覚は多様性であるという視点に立ったデザインが求められています。
*C型・P型・D型色覚の人に見分けられる配色を知りたいときには、色覚シミュレーションツールが役立ちます。
色覚シミュレーションツールについて