コンピュータ技術の利用によりP型やD型、T型色覚の人の「見分けにくい色」を知ることができるようになりました。カラーユニバーサルデザイン機構ではこのツールを「色覚シミュレーションツール」と呼んでいます。
本来、人は自分以外の人が色をどのように感じているのか体験することはできません。色覚シミュレーションツールにおいても、P型やD型、T型色覚の人の色の見え方そのものは体験できませんが、「色の見分けにくさ」を体験することができ、大変役立ちます。
*フォトショップやイラストレーターでは、色覚シミュレーションツールのことを「校正ツール」と呼びます。
*色覚シミュレーションツールによって表現される色が異なる場合がありますが、「色の見分けにくさ」は正しく再現されています。
抑えておこう!色覚シミュレーションツールの「色」の表し方
色覚シミュレーションツールを使う前に、知っておいていただきたいのは「色」の表し方です。正しく理解し、適材適所で色覚シミュレーションツールを使い分け、役立てていただければと思います。
下のクレヨンの写真は、スマートフォーンのアプリ(色覚シミュレーションツール)を利用したものです。
写真左は、C型色覚の人の見え方、写真右はP型色覚に色覚シミュレーションした画像です。
P型色覚の人がこのクレヨンの色を見ると、上段の右から黒、緑、赤、茶色が見分けにくい色であり、下段の左から二つめの橙と黄緑色は色が似ていることがわかります。色覚シミュレーションツールは、このように「見分けにくさ」を簡単に知ることができます。
*色覚シミューションツールの大半は、「色の見分けにくさ」を1色で表します。
なぜ、「色の見分けにくさ」を1色で表すの?
色覚シミュレーションツールは、「色の見分けにくさ」を黄土色で表すものがよくあります。その理由を下の図で説明します。
① の図は、C型色覚の人に見分けられる4色です。この4色をP型色覚の人が見ると「同じ色に感じる色」と「似た色に感じる色」があります。
②の図にあるように、P型色覚の人にとって「見分けにくい色」を1つの色にまとめて表します。(ここでは便宜的に黄土色に代表させています。)
②で選んだ代表の色を使って①の色の見分けにくさを表すと③の図のようになります。「見分けにくさ」を理解しやすくするために1つの色で表しているわけです。
色覚シミュレーションツールは、「実際に見ている色」を再現するものではなく、「色の見分けにくさ」を再現したものですので、例えば緑色の一色で表してもいいわけです。
色・弱者に起きている問題の大半は「見分けにくい色」によって情報を正しく受ける取ることができないことにあります。色の感じ方の違いを問わずできるだけ多くの人に「見分けられる色」を用いることは重要であり、色覚シミュレーションツールは。その手助けとなるツールです。
*色覚シミュレーションの研究者である東京大学准教授 伊藤啓と石川県工業試験場の前川満良による解説はこちらをご覧ください。
カラーユニバーサルデザイン(CUD)チェックツール(色覚シミュレーション)の原理と注意点
色覚シミュレーションツールの紹介
「色覚シミュレーションツール」は、パソコンやスマートフォンのアプリ、ディスプレイに組み込まれたもの、また、メガネタイプのものなどがあります。ここでは、カラーユニバーサルデザイン機構が開発に協力させていただいた製品を紹介します。
「色のシミュレータ」
スマートフォンで簡単に使用できるシミュレータです。
「バリアントール」(C型色覚の人用)
メガネタイプのシミュレータです。メガネの上からかけることができます。
「ソフトウェア・シミュレーション」
パソコンでデザインをしながら、色覚の多様性に対応した色を選んだり調整することができます。
「P型・D型色覚の人用」ツール
P型・D型色覚の人が、色を見分けるときに役立つツールをいくつか紹介します。
色覚シミュレーションプログラムのオープンソース化
CUD社会への移行のために色覚シミュレーションの標準的な仕様を無償で公開しオープンソースとする計画