第186回国会 参議院予算委員会 第13号会議録(2014年3月14日)
有村治子氏(自民党)の「行政改革の一環としての色弱者への対応」についての質問と答弁
○委員長(山崎力)
平成二十六年度一般会計予算、平成二十六年度特別会計予算、平成二十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、経済財政・行政改革・歴史認識に関する集中審議を行います。これより質疑を行います。有村治子君。
○有村治子
自由民主党の有村治子です。
(中略)
がらっとテーマを変えて、次に行政改革の一環として、色弱者への対応について質問をさせていただきます。
私が小さい頃には、色弱の方々は、いわゆる一般的には色盲、カラーブラインドという言葉が一般的には使われていましたが、近年は、最近の一部差別的な含みもあるのではないかという指摘も受けて、現在は色盲という言葉は余り使わずに色弱、色弱者という言葉が支持されるようになってきています。そこで、今回はそのことにも配慮をした上で、色の判別が付きにくい方を色弱者と、色弱と呼ばせていただきます。
さて、日本にこの色弱の方々はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。昨日、質問通告で政府に聞きましたら、どんな問題にも何らかの球を返してくださるはずの日本政府各省庁だったんですが、ここで問題にぶち当たりました。日本にいらっしゃる色弱者の数、統計を教えてくださいと質問通告したのに、どの省も答えられる省がなかったわけでございました。まさに、色弱者対策が省庁間のはざまで、障害者でもない、手帳が交付されているわけでもないということで、まさにこの色弱者対策の配慮が行き届いていない日本の行政をかいま見た象徴的な事象だと思います。
色弱は、先天的、遺伝的特徴で男性に発現することが多く、およそ日本の男性の五%、二十人に一人が発症をするというふうに見られています。それに基づくと、日本は約三百二十万人の色弱者、女性も含めています、色弱者がいらっしゃると統計的には試算される。そういう意味では、色弱の方というのは、たまにいらっしゃるというわけではなくて、本当によくいらっしゃる、大変大きな数の国民を抱えているというのが現状です。
しかし……(発言する者あり※1)僕もそうですと後ろから声が聞こえてきましたけれども、男性に非常に多いんですね。私の身近にもたくさんいらっしゃいます。でも、自らがなかなか、私は色弱なんだよということを言うと不利益も多かった、就職差別もある時代もあった。そんな中で……(発言する者あり)ありましたよと、今後ろから聞こえています。応援ありがとうございます、十分でございます。ということで、なかなか言い出せないために対策が進みにくいということがあります。(※1 民主党(当時)の福山哲治
色弱というのがどういうふうに見えるのかということを、今日、配付資料の一番、御覧になってくださいませ。(資料提示)実は皆様、配付資料で同じ資料を見たいとおっしゃっていただく方は、私、有村のホームページのトップページにこの配付資料をダウンロードできるようにしてありますので、御関心のある方は見てください。
この上の帯がいわゆる虹色で、通常の健常者の方々に見える色でございます。それが、色の判別が付きにくい色弱者の方々には同じ色がこのように見えます。健常の方には赤と緑が全く違う対比できる色ですが、見てみますと、色弱の方にはこれが黄土色として同じ色にしか見えないという現状があります。同じように、星印が一緒に見える、四角印の紺や青と紫も同じようにしか見えないというような色弱者の見え方の特徴があります。
そういう意味では、学校の健康診断で行われていた色弱の検査というのが必須でなくなりまして十年以上が過ぎました。私たちが小さい頃には必ずこの色弱検査というのを受けなければならなかったんですが、就職差別などのことがあって撤廃をされて、必須ではなくなりました。しかし、そういう検査を受けなかった子供たちが今、自分が色弱であるということに気付かぬまま成長して、就職時に初めて自分が色弱であることに気付き、希望した職種、例えばパイロットや警察官、運転士ということを断念しなきゃいけないという事例も報告されています。
そういう意味では、本人の希望、保護者の希望に基づいてプライバシーを確保した上で検査環境を整えて、子供のうちにその色弱かどうかの検査をする機会をしっかりとつくることも道ではないかと思いますが、学校の健康診断、色弱検査のあるべき姿はいかなるものでしょうか、文部科学省にお伺いします。
○国務大臣(下村博文)
お答えいたします。学校では色弱でなく色覚検査というふうに言っておりますが、この色覚検査については、色覚異常の有無及び程度を明らかにすることを目的に、昭和三十四年度から平成十四年度まで、学校における定期健康診断の必須項目として実施してまいりました。しかしながら、この色覚検査において異常と判別されるものであっても大半は支障なく学校生活を送ることが可能である、また文科省としても手引を作成し、色覚異常を有する児童生徒への配慮等を指導してきた、そういうことによりまして、平成十五年度からは色覚検査は学校における定期健康診断の必須項目から削除され、希望者に対して個別に実施する、そういう項目に変更になりました。
その後、最近になりまして、自身の色覚の特性を知らないまま卒業し、就職に当たって初めて色覚による就業規則規制に直面するという、そういう実態が報告されたことを踏まえまして、日本眼科医会から希望者に対する検査の実施の推進を要望されてきたところであります。
これを受けまして、文科省に設置した検討会において昨年十二月にまとめられた意見書で、色覚検査においてより積極的に保護者への周知を図ることが大切であるというふうにされ、今後は積極的な色覚検査に対する周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
○有村治子
下村大臣、ありがとうございます。実は、私たちの小さい頃にはこの検査が必須でございました。同級生がいっぱいいる中で検査をされて、同級生がこんなのもおまえ読めないのかよとからかわれたりして、色弱の方は非常に屈辱的な思いをして、一部のハンディがある方はその検査そのものを撤廃するという運動を起こされたぐらいに自尊心が傷つけられるという深い傷を負っていらっしゃるのも、これまた現実でございます。(発言する者あり)いじめられたというお声もありました。そういう意味では、是非にその児童生徒のプライバシーを確保して、そして、その同級生からやっぱりからかわれることのないように、そしてその告知の場合も本人にプライバシーに確保して通知される、その環境の徹底に、是非色弱者の方々のお気持ちをやっぱり大事にする行政であっていただきたいと思います。
そして、自治体のホームページ、御紹介をする資料の二を御覧になってくださいませ。これは、中部地方にある、ある市のホームページから取ってきたものでございますが、何々市のホームページのトップページでございます。そして、緑の中で赤でようこそ何々ホームページへというふうに書かれていて、この市が悪いというわけではないので名前は今日は明らかにしていません。
けれども、そして、これは地下鉄の乗り場の表示でございますが、これが色弱の方々にはどのように見えるのかということをお伝えをしますと、緑の地に赤というのは、黄土色の中でほとんど字が見えない、どこにカーソルを置いていいのかも分からないという現状になります。そして、地下鉄のこの新宿都営線、千代田線、丸ノ内線、健常者には明らかな色の違いがありますが、それも黄土色の濃淡にしか見えないという現状があります。
学校で、まさにこれ黒板の状況なんですね。緑の黒板に赤のチョークで先生が文字を書いても、色弱の方には書かれている文字がほとんど読めないという現象が起こってまいります。今、健常者にもみんなにも分かりやすくするために、小学校の教科書は全部カラーになりました。山道の案内図、標識もカラーになっているところがあるんですが、カラーになると、見えやすいことを意図しているにもかかわらず、実は色弱者には全く見にくいものに悪化しているという現状もあります。
そういう意味では、行政としてどのように配慮していかれるのか、文部科学省、国土交通省、厚労省からお伺いをさせていただきます。残りの時間が極めて少ないので、本当に短い中で、これをこうしますと具体的に短くおっしゃっていただければ大変有り難いです。
○国務大臣(下村博文)
文科省としては、まず教職員が自覚をする必要があると思います。この色覚異常について正しく自覚をする。そのために、平成十五年五月に「色覚に関する指導の資料」を作成、配付し、その中で、学習指導に際しての板書や掲示板等における留意点、進路指導における留意点などについて具体的に示しております。
また、平成二十五年度より、主に養護教諭や保健主事を対象にした研修会等において周知徹底を図り、各学校における適切な対応を促しているところでありまして、今後とも、色覚異常の児童生徒が安心して学校生活が送れるよう各学校に対して適切な指導をしてまいりたいと思います。
○副大臣(高木毅)
国土交通省が所管をいたしております公共施設等の分野におきましては、施設等のそれぞれの特性に応じて色覚異常のある方への配慮として見分けしやすい色の組合せをするなどの対策を講じているところでございまして、例えば先ほど御指摘いただきました駅などの旅客施設につきましても、バリアフリー整備ガイドラインにおきまして、案内設備の表示方法として、色覚異常の利用者に配慮し、見分けしやすい色の組合せを用いる。すなわち色の明度、明るさでございます、色相、色合い、又は彩度、鮮やかさでございますけれども、そうしたものの差をはっきりとして色覚異常の方にも分かるようにというふうな配慮をいたしております。
また、気象庁におきましても、ホームページ上で図表示について注意警戒レベルの配色、統一性を持たせるような配慮をいたしましたけれども、その際に色覚異常のある方にも配慮した配色をさせていただいたところでございまして、国交省といたしましては、色覚異常のある方も安心して生活できるように様々な配慮をしているところでございます。
○副大臣(佐藤茂樹)
厚生労働省の所管しますハローワークでは、企業に対しまして従業員を雇い入れる際に、色覚異常は不可などというそういう求人条件を付けるのではなくて、色を使う仕事の内容、どういうふうな仕事の中身なのかということを求人票の中に詳細に記述するように指導をしているところでございます。
また、例えばその採用選考時の色覚検査について相談が事業主からあった場合には、本当に必要なのかどうなのかということを、そういうことを確認した上で、事業主の工夫によってちゃんと仕事ができないのかどうなのか、そういうこともしっかりと事業主の方に啓発指導をしているところでございまして、今後とも、そういう色覚異常も含め、就職差別のない、そういう公正な採用選考が行われるように取り組んでまいりたいと考えております。
○有村治子
東日本大震災のときに、その緊急現場の修羅場においてこのようなトリアージタグというものが使われました。これは、一挙に、瞬時に多くのけが人、被災者の方が出た場合に優先的に誰を治療することによって救える命を救うのかというときに、多くのけが人あるいは病気の方にこうやって右手に付けるものでございます。今日は消防庁からお借りしてきました。これも色弱の方が見えにくい、黒、赤の判定が付きにくいという指摘が東日本大震災でも出されました。是非厚生労働省さん、これは国際的な統一の色だということを理解しておりますが、例えば色と色の間に白線を設けるだけでも色弱者の方にも分かりやすくなります。(※2)妊婦さんの項目がないということも震災で指摘を受けました。是非改善をしていただきたく、お願いを申し上げたいと思います。(※2その後JIS安全色 z9103:2018の改定により黒と見分けやすい赤が制定されました。この後トリアージタグはわかりやすいものに変更されています https://cudo.jp/?p=7132)
最後に、やはり色弱者にも優しい、そして今パラリンピックがロシアのソチで行われていますが、六年後には日本でパラリンピック・オリンピックが行われます。やはり、どの方にも優しい、そして障害がある、ハンディがある、事情があるなしにかかわらずそれぞれが輝いていく、そういう心の先進国としての国づくりが求められている中で、安倍総理、色弱の方々も含めてのユニバーサルデザインの先進国になる国づくりの抱負を最後にお聞かせください。
○内閣総理大臣(安倍晋三)
二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会におきましては、施設整備に当たって全ての競技施設をユニバーサルデザイン、言わば障害のある方々にとってバリアのないデザインにすることを決めております。会場へのアクセスに関わる道路や駅などについてもユニバーサルデザイン化する計画であります。この中で、標識についても見やすく分かりやすいものにするよう、サイズ、色、コントラストなどについても配慮するものといたしております。
東京大会には世界からたくさんの方々がやってこられるわけでありますが、その際、我が国が、政府としては今色弱という言葉ではなくて色覚異常という言葉を使っておりますが、の方々にとってもバリアのない国であることを理解していただけるよう、大会組織委員会や東京都とも連携しながら取り組んでいく考えであります。
○有村治子
以上で、私、有村治子の質問を終了いたします。ありがとうございました。
○委員長(山崎力)
以上で有村治子君の質疑は終了いたしました。(拍手)