「ユニホームの色が区別できない」数百件の苦情が寄せられたとESPN電子方が報じた。プレミアリーグ、リバプールーマンチェスター・ユナイテッド戦のことである。
マンチェスターU(上写真:右)の黒に近いモスグリーンのような色のユニホームと、リバプール(上写真:左)の赤い色のユニホームは、P型色覚の人には同じ色に見えるため、どちらがどのチームが見分けがつかない。
英国では、P型やD型色覚の人の割合は12人に1人。今までで最も多くのユニホームの苦情になったことも理解できる。
日本でも同様のことが起きている。
明治安田生命J2リーグのFC岐阜と松本山雅FCの対戦だ。岐阜(下写真:左)はグリーンのユニホーム、松本(下写真:右)はグレーのユニホームを着用。松本の工藤浩平選手が誤って対戦相手である岐阜の選手にパスを出すなど混乱を招いたことにより、試合は中断された。ハーフタイムにユニホームを違う色に着替えて登場したのである。
大住良之氏(財団法人日本サッカー協会殿堂委員会委員)はオフィシャルーアーカイブサイトにこう記されている。
「25年前のスタート時以来、Jリーグのユニホームに私は大いに不満をもってきた。アップで見たときのデザインばかりが優先され、緑のピッチ上に11人が散ったときの見やすさという最も重要な要素が後回しにされてきたからだ。だがそれ以上に、Jリーグ自体に、見分けやすいユニホームで試合をさせようという意識が低いように感じる(省略)
サッカーは「色の世界」である。
2つのチームは色で区別し、選手も観客も、ユニホームの色を頼りに試合を楽しむ。それが一部の人にとって見分けにくいものだったら、その人びとは楽しみの大きな部分を奪われていることになる。相手とのユニホームの区別ができずに「自分はサッカーが下手」と思い込んでしまう少年が、日本でも20人に1人、欧州なら12人に1人もいるとしたら、心が痛む。
スポーツの世界でこの問題に最初に手をつけたのは2016年、アメリカンフットボールのNFLだった。赤と緑の対戦を「赤対白」にさせたのだ。だがユニホームメーカーからの要請を受けたクラブの反対により、わずか1年で取りやめになった。 しかし昨年6月、イングランド・サッカー協会が専門家の意見を聞いて多用な色覚をもつ人への配慮を求めるガイドラインを発行した。ユニホームだけでなく、ボール、ビブスやマーカーコーンなどの練習用具、スタジアム内の案内板や入場券を買うためのサイトの色の使い方にいたるまで、細かく解説されている。その考え方は、急速に欧州各地に広がろうとしている。(省略)
スポーツ界ではまだこの問題は看過されたままだ。「色の世界」であるサッカーには、この問題の研究や対策を率先して進める責務があるように感じる。」
CUDOには、子どもがP型・D型色覚であるご家族から、ユニホームの色分けに関する相談を受けることは少なくない。
学校やクラブ、オリンピック、パラリンピックにおいても、色覚の多様性に対応することは求められている。