Jリーグが開幕から28年目を迎えた5月15日(Jリーグの日)「スポーツとCUD対応の必要性を考えよう」をテーマにCUDO賛助会員の集いが開催された。

講師にお迎えしたJリーグ(公益財団法人日本プロサッカーリーグ)の川崎濃さん、橋場貴宏さんは、Jリーグのデザインに携わる専門家。Jリーグでは、2021年シーズンから全ての公式戦で「選手番号」「選手名」の書体を統一し「オフィシャルネーム&ナンバー」の導入を開始。橋場さんは、その理由を「観客席とピッチの距離を遠ざけることになったスタジアムの巨大化、デジタル配信の開始によるスマートフォン観戦の誕生、チーム数の増加と共にものすごい数のユニフォームカラーが出てきたことにより、『背番号がわからない』『チームカラーが見分けにくい』『誰がゴールしたのかわからない』といった試合が出てきた。より多くの人に楽しんでいただき、応援していただくことを考えたときに、カラーユニバーサルデザインの取り組みの必要性に気づくことができた。背番号は、選手の識別をするために重要な要素であり、背中のほどんどの面積を占める。Jリーグの公式試合では、重要な記号である背番号を見れば選手がわかるように”オフィシャルネール&ナンバー”の導入を考え、2年前から計画してきた」と語った。

サッカーでは、選手とゴールキーパー、レフリーもユニフォームの色が被ってはならない。そのため、ホームとアウェイの2色のユニフォームを準備することが決められている。対戦チームのユニフォームの色が類似していたときは、見分けられる色に着替えることになる。Jリーグでは、各チームそれぞれにファーストユニフォーム、セカンド、サードの3種類、ゴールキーパーが3種類、レフリーにおいては5種類のユニフォームを持つそうだ。まさに「色の世界」であり、色覚の多様性に対応することが求められる。

【色覚タイプの割合と特徴】
色の感じ方(色覚)は、いくつかのタイプに分けることができ、見分けられる色は全く異なる。
C型の特徴:暗い青・青紫・紺を見分けにくい人が多い。
P型の特徴:赤・緑・茶色・黒が同じ色に見える。
D型の特徴:黄・明るい黄緑/明るいピンク・明るい水色など、”明るい”色が同じ色に見える
*白内障:明暗の差が小さいと見分けにくい。

日本:男性の20人に1人がP型・D型色覚。
フランスや北欧:男性の10人に1人がP型・D型色覚


「Jリーグでは、今年から”ユニフォーム使用計画”の段階でチームカラーが被らないようにブロックしてゆくが、ここに至るまでには賛否があった。この取り組みは、サッカー文化に影響するものと思っている。環境の変化に対応し、視認性を高めることで、1人でも多くの人にサッカーを楽しんでいただき、コミュニティーが広がって行けばと考えている」(橋場さん)

【「オフィシャルネーム&ナンバー」決定までの過程】
1)CUDOの「推奨カラー」を参考に色を選出。
2)Jリーグ全クラブで過去3年に選手番号に使用された上位色をベースに、CUDOの助言を元に色を選定。
3)選定した二つにマッチする色として、5色(白・青・赤・黒・黄)に限定。この5色の色相は変えず、彩度や明度を変えてシミュレーションを用いて見分けられる5色を選定。
4)スタジアム視認性テストの実施。選定した色が見分けやすい配色になっているか、試合を再現し実験。
A:位置(観客席・カメラ)・スピードのある動き・角度
B:昼・ナイター
C:雨・汗による色の変化。
D:距離/10m以上離れても背番号を正しく読み取ることができるか。
E:日照(日なた・日陰)

【ユニフォーム服地色に対する「選手番号色」の選択方法は?】
チームカラーとアイデンティティを適合しやすいように、推奨適合の配色と組み合わせを各チームのデザイン担当者に紹介・提案。コントラストの適合判定の仕方を共有し、各チームで色使いを決定。


「オフィシャルネーム&ナンバー」を取り入れた反応は?】
新たに決まったチームカラーで試合を行ったところ、サポーターの皆さんから「見分けやすい」「数字がくっきり見えた」「視認性抜群」などの評価、意見を多くいただいた。実況者から「実況しやすかった」との声をいただいた。

「見にくい」という声はなかったか?】
割合は少なかったが、そういう声もいただいた。いただいた声は受け止め、どのような問題点があるのか検討を続けている。視認性は改善されているが、まだまだ改善しなければならない余地があり、課題を持っている。
*「見にくかった」という試合(チームカラー)を検証した例:
・デザイン画より、実際の生地の色が濃いために、見分けにくくなっていた。
・陽ざしが強すぎて、視認性が悪くなっていた。

色の感じ方が違うことで、「ユニフォームの色が同じ色に見え間違えてパスを出してしまい、チームの仲間や監督に怒られた」といった相談に、できることは何かと思考錯誤したりしたものだ。この度の「オフィシャルネーム&ナンバー」の導入は、子どもたちにとっても朗報だろう。「誰もが公平に認知できる観戦・視聴環境の構築を推進する」Jリーグの取り組みを、監督やコーチ、保護者とも共有し、また、日本から世界へ、スポーツ全体に広がることを期待する。

<Jリーグ ユニフォーム特集2021>
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ユニフォーム特注2021